和紙についての基礎知識

和紙についての基礎知識

楮の和紙は強度に優れるので障子に使われる楮の和紙は強度に優れるので障子に使われる

手紙やメモ書きなどの文房具から、照明、ちょうちん、障子などのインテリアに至るまで、和紙はいろいろな用途で使われています。和紙に触れた覚えのない日本人はほとんどいないでしょうし、日常生活に自然に入り込んでいる日用品なので誰でもその存在は知っているはずです。ですが、一体和紙とは何なのか、普段使っているコピー用紙と何が違うのか、説明しろと言われて説明できる日本人は少数です。
そこで今回は、もっと和紙を楽しむために、和紙の基礎的な知識を整理したいと思います。

多様なラインナップの和紙を理解するには、原料と加工法を押える

和紙の原料である三椏の花。書道用紙などに和紙の原料である三椏の花。書道用紙などに

和紙といっても、いろいろなタイプがあります。見た目も丈夫さも肌触りも何もかも違う紙が同じ和紙と分類されているから初心者は混乱してしまうのですが、まずは和紙の原料とその加工法を大まかに理解してください。そうすれば和紙が見せる多様性を大ざっぱにでも理解できるようになります。そこで早速原料から考えますが、古くからある和紙は当然、日本の山で取れる原料から作られます。

楮(こうぞ)
三椏(みつまた)
雁皮(がんぴ)

以上が和紙の主な原料になります。

楮(こうぞ):日本の山に自生するクワ科の植物で、最も和紙に利用されている原料になります。落葉樹の低木で、日本全国至るところで栽培されています。丈夫さに優れている原料で、最も強度を必要とする障子や絵画用の和紙に向いています。
三椏(みつまた):暖かい地方に自生する低木の落葉樹です。非常になめらかな繊維が特徴的で、光沢のある和紙ができあがります。書道用紙や高級和紙などに使用され、日本国の紙幣にも利用されています。
雁皮(がんぴ):西日本に自生する低木の落葉樹ですが、栽培が困難な植物としても知られています。非常に繊細で透けるほど薄い和紙を作れるのですが、栽培が困難なため原料が少ないというデメリットがあります。本来雁皮を使って日本政府は紙幣を作ろうと考えていましたが、量の安定確保の観点からふさわしくないと見送られました。

代表的な和紙の加工方法は9つ

京都の風土や行事にちなんだ模様が美しい千代紙京都の風土や行事にちなんだ模様が美しい千代紙

次は和紙の加工法に関して考えたいと思います。

雲竜紙
柿渋紙
板締紙
落水紙
抜き染め紙
揉紙
友禅紙
京千代紙
江戸千代紙

以上の9つが主な加工方法によって作られる和紙の名称になります。和紙そのものは原料の木から皮をむき、余分な部分を捨て皮を煮ます。煮出した皮を流水で洗い、叩いてふわふわの状態にしてから、その原料をのりなどと一緒に水に溶かします。
次にとろみのある水を板の上に取り、巧みに板を動かしながら、板の上にまんべんなく厚みのある層を作ります。その厚みが紙になるのです。その基本動作を踏まえた上でいろいろなアレンジが存在するので、細かく見ていきましょう。

もんで柔らかくした、布のようなテイストの揉紙もんで柔らかくした、布のようなテイストの揉紙

雲竜紙:和紙の上に楮(こうぞ)の繊維を散らします。和紙の上に雲のような繊維の線が入ります。
柿渋紙:渋柿の汁を塗り、防水性を高めた味わいのある和紙です。
板締紙:和紙を畳んで板で挟み、さらに強く縛った状態で染色する技法です。折り畳んだ紙を広げると、紙の折り曲げ方に沿って染まります。
落水紙:のりをたくさん入れたとろみのある水で作る和紙です。乾ききる前に水を噴射し、のりを落として細かい穴を開けた形に仕上がります。
抜き染め紙:色を抜きたい部分に専用の材料を置き、蒸して色を抜く技法です。
揉紙:揉んで柔らかくし、布のように仕上げた和紙です。掛け軸などによく使われる技法です。
友禅紙:装飾的な色合いを施した和紙を友禅紙といいます。
京千代紙:祝儀用の手紙に使った和紙を千代紙といいます。京都にちなんだ文様を描きます。
江戸千代紙:版画の木版刷りを使って歌舞伎などの絵をあしらった和紙です。

和紙をじっくりと眺めてみる

原料や加工法で和紙はいろいろな顔を見せる原料や加工法で和紙はいろいろな顔を見せる

以上が和紙の基本です。素材によって質感はかなり変わりますし、加工法によって雰囲気も変わります。そうした組み合わせの中で、目の前にある和紙がどのような素材、技法で作られているのか考えてみると和紙の見え方が変わってきます。
和紙はいろいろな和雑貨に使われているので、チャンスはたくさんあります。まずは家の障子や引き出しの中の和紙をチェックしてみましょう。