布についての基礎知識

布についての基礎知識

綿の原料。綿は最もポピュラーな布の素材綿の原料。綿は最もポピュラーな布の素材

布は衣類にも家具にも使われており、非常になじみの深い素材になりますが、意外に詳しく知らない人が多いようです。例えば着物や浴衣の布はどうやって織っているのか、どうやって染めているのかを大ざっぱにでも知っている人は、少ない印象があります。
そこで、今回は日本の生活に欠かせない、さまざまな布について考えたいと思います。

布のポイントは大まかに3つ

絹の原料。蚕の繭を使った絹は手触りが滑らか絹の原料。蚕の繭を使った絹は手触りが滑らか

布を理解する際には、大まかに3つのポイントに注意してください。素材と染め方、織り方の3点です。その違い、あるいは組み合わせで布の個性はほとんど決まってしまうので、代表的な素材、染め方、織り方を学んでみましょう。

主な布の素材は、絹、綿、麻

麻の原料を糸状にした糸玉。麻は植物を原料に麻の原料を糸状にした糸玉。麻は植物を原料に

今の洋服は化学繊維が増えてきましたが、天然の綿や麻を使用した洋服やファッションアイテムは多くあります。同じように和の布も主な素材は絹と綿と麻になります。絹はシルク、綿はコットン、麻はヘンプと、洋服の世界では英語名で呼ばれる場合も多く、どれもなじみの深い素材だと思います。

麻:通気性、吸湿性、速乾性に優れており、肌触りがざっくりとしていて非常に爽やかな印象があります。日本の場合はのれんなどにも麻の生地が使われる場合が多く、洗濯機での洗いが可能です。
絹:今も昔も高級素材の1つです。軽くて丈夫で、滑らかな肌触りと光沢が最大の特徴です。ただ、湿気と虫に弱いので、通気性のいいタンスに保存するなどの工夫が必要になります。
綿:丈夫で吸湿性があり、虫も付きにくく、洗濯も簡単という最も日常的な素材になります。洗濯後は干す前に手のひらで叩いて伸ばしてあげると、しわの防止になります。

主な染め方は、浸染(しんぜん)、捺染(なっせん)、防染(ぼうせん)

今度は染め方を考えたいと思います。代表的なテクニックは、浸染(しんぜん)、捺染(なっせん)、防染(ぼうせん)という3つになります。耳慣れない用語だと思いますが、漢字を見ると何となく想像が付いてくるので、漢字を一字一字分解して考えてみましょう。

浸染(しんぜん):浸して染めるという漢字の通り、糸や生地を丸ごと、染料の中に浸して染めてしまう技法をいいます。当然ですが、布の表も裏も同じ色に染まります。かすりつむぎに使用される技法です。
捺染(なっせん):捺染の捺は、捺印の捺と同じです。岩波書店の『広辞苑』を調べると、捺とは「上からおすこと。おしつけること」という説明があります。つまり捺染とは、布や糸の上から染料をなすり付けて定着させる技法をいいます。染料に丸ごと浸す方法とは違い、細かい染め分けが可能になります。友禅小紋などが代表例です。
防染(ぼうせん):染を防ぐと書いて防染です。意図的に生地を糸で縛ったり、のり、ろうなどを布に塗ったりして、染め残しを作る技法です。

主な織り方は、平織(ひらおり)、繻子織(しゅすおり)、綾織(あやおり)、捩織(もじりおり)

最も単純な平織。分厚く摩擦に強い最も単純な平織。分厚く摩擦に強い

最後に織り方です。基本的には縦糸と横糸をどうやって組み合わせるか、そのバリエーションの違いになるのですが、代表的な織り方は、平織(ひらおり)、繻子織(しゅすおり)、綾織(あやおり)、捩織(もじりおり)になります。

平織(ひらおり):最も単純な織り方です。縦糸と横糸を交互に十字に上下させて組み合わせていく技法で、布は厚く丈夫に、摩擦に強くなります。糸と糸の間はすき間が大きくなります。
綾織(あやおり):平織と同じく、縦糸と横糸を十字に組み合わせるのですが、毎回縦糸を3本以上飛ばしてくぐらせる織り方になります。縦糸よりも横糸の露出が増えるので、生地の表面に斜めの太い畝ができあがります。
繻子織(しゅすおり):綾織よりも横糸をくぐらせる間隔を伸ばし、縦糸を5本以上毎回飛ばして十字にくぐらせる技法になります。綾織よりも横糸の露出が増え、強い光沢が出ます。編み目が少なくなる分だけ糸のすき間も減ってなめらかな印象が出ます。
捩織(もじりおり):他の織り方は、横糸と縦糸を1本ずつ使用して十字に織り込んでいくのですが、捩織に関しては、ねじった2本の太い縦糸を使用し、そのねじった糸の輪のすき間に横糸を通す技法になります。通気性が優れており、生地を引っ張ると伸びる特徴があります。

生地、織り方、染め方の組み合わせで、いろいろな布地になる

和布は染め方もいろいろとある和布は染め方もいろいろとある

以上が代表的な布の生地、織り方、染め方になります。これらの技法を組み合わせ、さらにちょっとしたアレンジを加えると、つむぎやかすり、ちりめんなどの生地ができあがります。
細かく分類するときりがありませんが、ほとんど全ての布が上で説明した技法の組み合わせでできています。まずは基本を押さえ、その上で奥深い和の布の世界に踏み込んでください。